文部科学省 科学研究費補助金研究
学術変革領域研究(B)
植物超個体の覚醒 Awaking of plant-microbe holobiont

2024.02.11

気孔開度自動計測技術を活用した細菌に対する気孔応答の解析(峯班・宮島班の成果)

Project Outline領域概要

植物と微生物の
超個体化の
メカニズムを解明する

地に根を張りその場から動くことのない植物は、生育地の環境変化に柔軟に対応する卓越した能力を備えています。これまでの研究は植物の環境適応能力を個の力として捉え、その分子機構を明らかにしてきました。

一方で、植物がその卓越した環境適応能力を発揮するためには、周囲の多様な微生物群との一体となった協働関係が欠かせないことが明らかにされつつあります。言い換えると、植物が微生物群をいわば「拡張された自己」として取り込むことで一種の高次生命体「超個体」を形成し、その環境適応能力を覚醒させることを示しています。本領域では、微生物との超個体化を通じて覚醒される植物の環境適応の新たな側面を暴き出し、その分子機構の解明を目指す学問分野「植物超個体機能学」の創成を目指します。

Message代表挨拶

本領域では、植物を個の存在として捉えるのではなく、多様な微生物との相互作用を通じて成立する超個体として捉えなおし、その環境適応機構を分子レベルで解明することを目指しています。 根圏(A01代表者:晝間敬)および葉圏(A02代表者:峯彰)での独自の微生物リソースを用い、微生物との超個体化がどのように植物の隠された環境適応能力の覚醒へつながるか、その仕組みを探索します。また、超個体化における植物と微生物集団の生命動態を可視化・解析するプラットフォーム「超個体イメージャー」の開発を進め、超個体化現象の理解を加速させます(A03 代表者:宮島俊介)。

本領域メンバーは、学振などのフェローシップや科研費・さきがけなどの若手向け研究費に支えられ、それぞれ独自の研究を継続・発展させてきた若手研究者です。本領域では、異なる研究分野に属し、異なる研究手法に長けたメンバーが一丸となって研究を進めます。また、これまでに渡り歩いてきた国内外のラボのスーパーバイザーや研究仲間との関わり合いから、オープンな研究環境やメンタリング、そして、着実に研究業績を積み重ねることが若手のキャリア形成に繋がることを実感してきました。領域の発展は、仲間の成長と成功によって初めて成し遂げられると考えています。我々をどうぞよろしくお願いいたします。

領域代表晝間 敬

Research Groups研究体制

植物と根圏微生物集団は、一種の高次生命体(超個体)として成り立っていますが、そこから生み出される共生(植物成長促進)機能の発揮原理は明らかではありません。本研究では、共生糸状菌Colletotrichum tofieldaieと有用細菌との超個体化により、植物が必須栄養素であるリンや窒素が欠乏した環境に適応する基盤を解明することを目的としています。本研究は、葉圏・根圏に内包される多様な微生物との超個体化を通じて覚醒される植物の環境適応能を、根圏微生物を介した植物の栄養獲得機構という観点から紐解き、本領域に貢献します。

A01研究代表晝間 敬

植物と相互作用する共生菌は植物圏で単独で存在しているわけではなく周りの多種多様な微生物集団と共に生きています。そして、共生菌の周りの微生物も併せて活用することで貧栄養環境下での植物の成長をよりよく促すことができることを発見しています。今回は、この微生物集団が発揮するユニークな植物成長促進基盤を様々な分野を専門とする研究者と共に解き明かしていきます。

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植物は、葉の表面に存在する気孔の開度を調節することで光合成に必要なガス交換と乾燥への適応を両立し、かつ、蒸散による全身的な物質転流の駆動力を生み出してます。気孔の開閉制御を介した環境応答は植物の個の力としてこれまで捉えられてきました。これに対して、本研究では、気孔開閉を操作する葉圏細菌との協働による植物の環境応答の新たな側面を暴き出します。領域メンバーとの密接な連携を通じて、気孔を介した植物の環境適応に葉圏細菌が与える影響とその仕組みを解明します。さらに、研究計画を強力に推進するツールとして、非破壊的な気孔観察デバイスと画像処理による気孔開度の自動定量技術を開発します。本研究は、多様な微生物との超個体化を通じて覚醒される植物の環境適応能力を、葉圏細菌による気孔開閉制御という観点から紐解き、本領域が掲げる「植物超個体機能学」の創成に貢献します。

A02研究代表峯 彰

植物は常に微生物と関わり合いながらその一生を過ごします。言い換えると、微生物との関わり合い方を理解することなしには植物の生き様は語れません。植物生理学、微生物学、バイオインフォマティクス、イメージング、画像解析などに長けた領域メンバー間の学際的融合研究を武器に、まだまだ謎に満ちた植物と微生物の関係性の解明に挑戦します。

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植物は、葉圏・根圏での微生物情報を個体全体で統合し、地上-地下の器官機能を連動させる事で、自らの環境適応能力の飛躍的な向上を達成しています。これまでこの植物と微生物の協奏がもたらす超個体化現象は数多く報告されていますが、地上-地下という異なる空間での植物と微生物との生体応答を体系的に理解する実験系は未だ確立されていません。宮島班では、グループ内の研究者が有する独自の生体イメージング技術や画像解析技術を集結し、植物-微生物相互作用、地上-地下物質輸送、器官成長という「植物と微生物の超個体化」を読み解く鍵となる現象を可視化する研究プラットフォーム「超個体イメージャー」を構築します。それにより、これまでの技術的限界を突破し、葉圏・根圏に分断されていた植物微生物相互作用研究を統一する学術的な革新をもたらします。

A03研究代表宮島 俊介

「視る」ことは、生命現象を理解する第一歩となります。「地上と地下という全く異なる空間で、植物は如何にして微生物との共存関係を構築するのか」、我々の計画班は超個体の理解の第一歩となる「視る」技術を構築し、本領域で掲げる「植物超個体機能学」を推進します。

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Activities活動報告

  • 2024.02.11

    気孔開度自動計測技術を活用した細菌に対する気孔応答の解析(峯班・宮島班の成果)

  • 2024.01.12論文・書籍

    植物が病原細菌を手懐ける仕組みの一端を解明(峯班の共同研究成果)

  • 2023.09.09論文・書籍

    共生から病原と連続的に変化する糸状菌の植物感染様式を支える分子基盤を発見(晝間班の成果)

  • 2023.09.09お知らせ

    植物学会にて共催シンポジウム「植物超個体の覚醒を司る分子・細胞・個体の連動」を開催しました

  • 2023.08.17受賞

    平田梨佳子さんが植物生理若手の会研究発表会において「アグロデザインスタジオ賞」を受賞しました!

  • 2024.01.12論文・書籍

    植物が病原細菌を手懐ける仕組みの一端を解明(峯班の共同研究成果)

  • 2023.09.09論文・書籍

    共生から病原と連続的に変化する糸状菌の植物感染様式を支える分子基盤を発見(晝間班の成果)

  • 2023.04.27論文・書籍

    宮島班・戸田グループと峯班の共同研究成果:シロイヌナズナの気孔開度自動計測技術の開発

  • 2023.03.08論文・書籍

    宮島班からの根の組織配置の対照性を生み出す要因の一端を見事に明らかにした成果です

  • 2022.12.21論文・書籍

    晝間班からの論文・総説

  • 2022.12.21学会発表

    植物学会にてシンポジウム「植物細胞の分化運命の制御と可塑性」を学変(B)植物生殖改変と共催しました

  • 2023.08.17受賞

    平田梨佳子さんが植物生理若手の会研究発表会において「アグロデザインスタジオ賞」を受賞しました!

  • 2021.12.04受賞

    峯が日本農学進歩賞を受賞しました。

  • 2023.09.09お知らせ

    植物学会にて共催シンポジウム「植物超個体の覚醒を司る分子・細胞・個体の連動」を開催しました

  • 2023.04.27お知らせ

    日本植物学会第87回大会でシンポジウム「植物超個体の覚醒を司る分子・細胞・個体の連動」を企画します

  • 2022.12.21お知らせ

    第2回領域会議をZoom会議にて開催しました

  • 2022.12.21お知らせ

    若手の会を金沢で開催いたしました

  • 2022.06.06お知らせ

    京都大学で植物超個体ワークショップを開催しました

  • 2022.01.07コラム

    あけましておめでとうございます

  • 2022.03.24イベント

    植物生理学会で超個体シンポジウムを開催いたしました(2022年3月23日)

  • 2021.12.04イベント

    名古屋大学で領域会議を開催しました(12月2日)

  • 2021.11.22イベント

    キックオフミーティングを開催しました